農林水産省発行「aff」に村上の鮭、塩引鮭作りが紹介されました。

塩引鮭作り風景-越後村上うおや

塩引鮭作り風景-越後村上うおや

本格的に寒くなる時季、新潟県北部の村上市を流れる三面川には、
産卵を控えた多くの鮭が遡上してきます。
そんな村上の自慢は、100種類以上もあるという鮭の伝統料理。
工夫を凝らし、頭から尻尾まで食べつくすと聞き、さっそく訪ねました。
最初に伺ったのは、村上が誇る鮭 の歴史と文化を学べる目本初の鮭の博物館「イヨボヤ会館」
イヨボヤとは村上の方言で鮭のこと。
江戸時代に青砥武平治という村上藩士が、生まれた川に帰る鮭の習性に着目し、
画期的な鮭の自然ふ化増殖に成功しました。
それにより、三面川に帰る鮭が増え、明治17年には74万尾という漁獲数を記録。
彼がこの地の鮭文化の礎を築いたと言えますね」と館長の奥村芳人さん。
豊かな鮭は、人々の貴重な食べ物となるだけでなく、村上藩の財政をも支えていたそうです。

村上を代表する鮭料理「塩引き鮭」作りを見学しました

村上を代表する鮭料理「塩引き鮭」作りを見学しました

続いて、地元で親しまれる魚屋「越後村上うおや」へ。
こちらでは、村上を代表する鮭料理「塩引き鮭」作りを見学しました。
エラや内臓を取り除いた後、ウロコの間に塩を力強くこすり入れて、約1週間塩漬けに。
塩抜きをしてから、寒風に7日間ほどさらして乾燥させます。
「塩引き鮭は、干している間にうまみが増します。
独特の気候風土が育んだ、塩鮭とはひと味違う食品です。
大晦日の年取り魚としても有名で、お正月には貴重な。
一のヒレ(胸びれ)・を年神様にお供えします。
その後、家の主人のお膳にのせるのがしきたりなんですよ」
と店主の上村隆史さん。
立派な塩引き鮭が、今年も家族に幸せを運ぶのですね。

村上の鮭料理

村上の鮭料理

次に立ち寄ったのは、朝からにぎ一わう「六斎市」。
毎月6回開催され、地元の人たちの憩いの場です。方言が飛び交う通りには、
食川菊や焼畑で作る赤カブといったこの地ならではの野菜が並び、口を奪われました。
続いて、村上伝統の鮭料理を味わうことができる老舗「割烹吉源」へ。
「鮭は捨てるところがないんです」と話す、六代目の吉田昭一郎さん。
「『川煮』は生きた鮭の胴体を輪切りにして味噌で煮たもの。鮭のミンチ
ととろろ芋を合わせた生地に、ハラコ(鮭の卵)を混ぜて吸い物に入れれば『卵皮煮』に。
背わたは『めふん』という塩辛にします。頭の軟骨 は酢でやわらかくして『氷頭なます』に。
「すっぽん煮」とは頭の軟骨を皮ごと煮付けた料理です」と吉田さん。
鮭料理の豊富さが、地域と鮭の結びつきの深さを教えてくれます。
「冬に作った塩引き鮭を、初夏の頃まで乾燥させるとジヤーキーのようになります。
それをスライスして、香りづけに酒をふりかけて食べるのが「酒びたし」です。
この珍味はもともと夏祭りやお盆のもてなし料理として愛されてきました。
味はもちろんヽこうした独特の食文化を育んだ背景もきちんと伝えていきたいですね」
と吉田さんは言います。
吉田さんは、うおやの上村さんらとともに、5年かけて100種類の伝統料理を再現。
鮭の新たな食べ方も考案するなど、次世代へ食文化を伝えようと取り組んでいます。

私も鮭料理を作ってみたいと思い、地元で郷土食の指導をしている本間キトさんのもとへ。
家庭でも作りやすい「鮭の焼漬け」を教わりました。
「卵をとった後の鮭が安価で手に入るので、冬はそれを調理していただくの。
川の鮭は上ってきた後だから、脂肪が落ちてあっさりめ。
私たちはこの川の鮭が好き。
海のほうの人たちは、海で獲れる脂がのった鮭のほうが好きみたい。
地域によって鮭の好みも違うのよ」と話しながら、鮭を豪快にさばく本間さん。
焼漬けは生鮭を切り分け、香ばしく焼いた後、熱々のまま漬けダレに浸します。
先に焼くことで日持ちし、作りたての味を長く昧わえるそう。
「漬けダレの昧が大事。漬ける時間で味も変わるし、砂糖を入れて甘めにする人もいるのよ。
自分好みの味を見つけてみてね」と本間さん。
村上の見事な鮭文化に思いを馳せながら、ぜひ自分の味を探してみたいなと感じた旅でした。

鮭の町、新潟県村上市

鮭の町、新潟県村上市

清 絢さん

清 絢さん